月刊「保育情報」2020年9月号

巻頭随筆

ガマンしている、でもやめない!

大屋寿朗(ART.31代表)

 

 2月末の「イベント・集会の自粛」と「全国一斉休校」の「要請」によって、「コロナ」は唐突に私たちの生活を一変させました。

Art.31は、出版と舞台芸術の制作を通じて、子どもの権利条約第31条「子どもの文化権」の実現をめざすNPOです。演劇・音楽などの舞台芸術は、敢て生身の「三密」を創り、魂を揺さぶり合う企みです。出版も、子どもに関わる人々のネットワークや集会など直接「つながる」普及に拘ってきました。しかし、人と人とが出会い、つながる活動は、3月から日本中でその活動の場を失いました。一方で、保育園や学童保育は「社会・経済活動」維持を理由に、感染防止の有効な手立ても示されず「丸投げ」で現場を押し付けられます。

私たち大人も振り回され混乱しました。ましてや子どもたちは、「コロナは怖い!」「命を守れ!」と脅されるだけで、納得できる説明も受けられず、意見を聞かれる機会も与えられず、一方的に学校を閉じられ、友達から引き離され、「子どもがうつす!」と、まるで感染媒体扱いで自宅に隔離され、何が何だかわからない状態に置き去りにされました。

こんな時にこそ、子どもの「最善の利益」を真ん中に置き、子どもを「権利の主体」として尊重し、子どもの声を頼りにしなければ、正解なんて見つけ出せない。そう憤りを覚えた時、いまここに、子どもの権利について子どもと大人が一緒に語り合い、考え合う入り口となる道具が欲しいと強く思ったのです。そこで急遽、昨年暮れから「31条の会」の仲間と準備していた「絵本ガイドブック」を、予定より3カ月前倒しで3月末に緊急出版しました。

そして5月中旬、「31条の会」は、受け身の「被害者」にされて置き去りになっている子どもたちに、「いっしょに考えよう」「自分を取り戻して!」と、メッセージすることを決めました。それが冒頭の「よびかけ」です。これも1週間でポスターにして全国頒布をはじめました。

 

「子どもたちへの呼びかけ」ですが、「あきらめない!」と一人称で宣言したら、「あきらめるな!」と励ます声になって私自身にも跳ね返ってきました。