はじめに
私たちは、子どもたちの豊かな成長発達を考えるときに、子どもたちが自主的・自治的に生活をつくり、豊かな想像力と生きる力を培っていくことが重要であり、そのためには、条約31条に定めた休息・余暇、遊び、文化・芸術活動に関する権利の保障がカナメになると考えてきました。国連子どもの権利委員会の日本政府報告書審査に当たって、第1回目の審査時から毎回提言してきた、日本における条約31条に関する課題が、こども大綱に取り入れられることを求めます。
提言内容
条約31条が規定する子どもの文化権(休息・余暇権、遊びの権利、文化・芸術への参加権)を、国内法に明記するとともに、子ども期の充実に向けての不可欠の権利として積極的に奨励すること。これらの権利に関する施策・行政を専門的に行う部局を設置し、地方自治体や市民・NGO・NPOの取り組みを積極的に支援すること。施策の立案と運用にあたっては、子どもの要求・アイデアを重視するとともに、子ども自身が意見表明を自由に行い、取り組みに参加・参画できる柔軟な制度を工夫することを求めます。
1.充分な休息と余暇(自由な時間)の権利の保障
1)子どもたちのゆとりと自由時間を確保するために、受験教育と学校のカリキュラムを見直す。
2)休日や祝日における学校の部活動をひかえ、休息・余暇の権利を保障し、子どもの自由意思によって活用できる時間を確保する。
3)学校施設の中に、子どもたちが体を休め寛げるスペースを確保する。
4)学校外の生活は子どもの私生活・市民としての生活の場であり、親による教育が優先されるべき領域であるので、学校の校則による規制をなくす。
5)過重な宿題を課さない。
6)深夜に及ぶ学習塾の営業や、土日、休日、長期休暇期間の受験向け講習の開催に対し、31条の権利を侵害しないよう社会的に規制する。
2.子ども時代の基盤である遊びの権利の保障
1)児童館・学童クラブなど、子どもの施設を増設する。
2)児童遊園・公園、子ども広場・運動場などの野外の遊び場を増設する。
3)地域の空き施設・空間の子どものための活用にむけて行政的に支援する。
4)学校施設・校庭をさらに積極的に開放する。
5)既存の集会所、体育施設、音楽施設などの公共施設を、子どもが利用しやすい制度に改善する。特に、10代の子ども・青少年が自由に集まれる施設を増設する。
6)市民・NGOの協力を得て、児童遊園・子ども広場・運動場などの野外遊び場に、遊びの内発的欲求を引き出し援助するプレイリーダーを配置して、子どもの活動を援助する。
7)自動車の危険を排除して生活道路を安全な歩行環境にし、路地を子どもが安心して遊べる空間として確保する。
8)自由に往来して遊ぶ子どもたちを見守る地域社会環境の整備を支援する。
3.豊かな生活と成長に不可欠な文化・芸術の参加権の保障
1)日常の生活圏での多様な自主的活動を可能とし、子どもの文化的・芸術的活動への参加を拡充するために、施設の確保と利用拡大をはかり、子どもの活動を支援する専門家を配置する。
2)芸術団体の創造活動への助成を強化し、多様で意欲的な作品創造を支援する。
3)市民NGO・NPO主体の鑑賞機会への助成の拡充により、地域の文化・芸術創造活動を支援する。
4)施設使用、移動運搬、専門家招聘などの経費を助成し、地方の芸術団体の運営強化や芸術団体の地方拠点化を奨励し、鑑賞機会と文化的活動の地域間格差を是正する。
5)子どもが文化施設にアクセスしやすいよう公共交通網を整備するとともに、交通機関の運賃割引を拡大する。
6)文化・芸術活動の企画・運営への子ども参加を促進する。
4. 子どもの文化権全般に関する保障のための総合的な課題
年齢、障害、言語や文化の違いなどによる差別なく、多様な要求と必要性に応える既存施設の利用内容の改善と、必要な施設の増設・改築を行う。
1)子どもの施設の建設と運営にあたって、子どもの要求・意見を聞き、子どもの参加を積極的に位置づけ、地域の親・住民など市民・NGOの参加を積極的に求める。
2)子どものグループ・個人が自由に活用できるように、さらに学校施設・校庭を積極的に開放する。体育・音楽などの公共施設を、子どもたちだけでも利用できるように制度を改善する。子どもの公共施設利用を無料化する。
3)子どものための施設職員・学芸員・司書・青少年団体育成者・プレイリーダーなどには、子どもの権利条約に関する学習を義務づけ、その内容と実施は市民・NGOと協働で行う。
以上
2023年10月22日
子どもの権利条約31条の会
特定非営利活動法人子どもと文化のNPOArt.31